これまで、とにかく山が好きで山小屋で働いたり、NPOで里山保全や環境教育に携わったりしてきました。この先もっと山や自然と関わって生きていきたい、でも自分になにができるだろうか、と一人模索しているときにフォレストカレッジ2022の募集を見つけ、勇気を出して応募しました。幸い受講することが叶い、訪れた伊那での体験は、どれも新鮮で刺激的で、それでいて温かく優しく、一人で将来を考えることに行き詰まりを感じていた自分にとって、救いになりました。
「体験をとおして」
私が参加した働くコースは文字どおり、森に入って全身で体験すること(さながら職場体験)がメインでした。木こりを生業とする講師の方々のもと、チェーンソーで木を切り倒して搬出するなど、作業自体の難しさや大変さだけでなく、やりがいや奥深さを体感しました。そして、どうやって作業をするのか、なんのための作業なのか、いきいきと話す講師の方々の姿は眩しく、ひしひし感じる森への愛と敬意に、強く惹きつけられました。
製材所などの見学もあり、森や自然との関わり方の多様さに感心してばかりでしたが、とりわけ木こりとして森の中ではたらく方々の想いや姿勢に、圧倒されました。自分たちが関わる森の姿は、自然の時間軸のうちほんの一時で、先人がいるからこそ今があること。林業はそんな今現在ある自然や人々に寄り添い、未来に繋いでいくことでもあるのだと。林業がこんなにも尊い仕事だとは知りませんでした。
合宿やオンライン講座での講師の方々は、さまざまな形で全国各地で活躍されていて、これまで知らなかった世界がどんどん広がっていきました。フォレストカレッジに携わるスタッフの方や参加者同士で話していても、参加のきっかけや森や自然へのスタンスはさまざまで、会話ができることが嬉しく、あっという間に時間が過ぎていきました。こうやって興味関心を共有する方々と同じ時間を過ごし、画面越しではなくリアルで、場所も共有して過ごすと、こんなにも心が動いて身に刻まれるものか、と感じました。森だけでなく人の素晴らしさも実感する日々であったと思います。
「その後とこれから」
フォレストカレッジへの参加と並行し、以前働いていた八ヶ岳をたびたび訪れていたのですが、ところ変われば森も山も全然違うことに気付かされました。高山のほうが森より自分に合うように感じる一方、長く関わって思い入れが強いと視野が狭くなってしまう(もったいない)と思い、合宿後に個人的に再び伊那を訪れました。フォレストカレッジで講師やスタッフとしてお世話になった方々の現場を見学させていただき、お話をうかがう中で、より深くそれぞれの方の想いや姿勢を感じ、自分自身の気持ちや方向性を繰り返し見つめ直しています。また、長野以外の森や森に関わる仕事も見たくなり、北軽井沢に足を伸ばし、同じ働くコース受講生の方が勤める施設および事業を案内していただくなど、フォレストカレッジのご縁をきっかけに、実際にいくつかアクションを起こすことができました。オンラインや受動的なプログラムだけでは、ここまで動き出せなかったと思います。
自然は思いどおりにならないことが当たり前で、謙虚に接するものだと山小屋勤務で学んだはずが、つい「好きだから」「やりたいから」という思いばかりが原動力になっていたように感じます。木こりの方々が自然への敬意を語る姿は本当に素敵で、自分本位の気持ちが大きくなっていたことに恥ずかしくなりましたが、同時に憧れになりました。同じように身体を使って働くことが体力的に難しくとも、なにか関わるような仕事がしたいと思い、ひとまず伊那への体験移住20日間を決めました。もっと深く広く見聞きし、体験し、自分自身が進む道を探ろうと思っています。 私にとって働くことは、暮らすこと、そして生きることと、ほぼ同義です。どこで、誰と、なにのために、なにをしていくか…。まだまだ少し動き出したばかりですが、フォレストカレッジでのご縁にも、大好きな山や自然にも、恩返しできるようになりたいです。