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Vol.4 手仕事から考える森のこと クロストークレポート

2022.03.08 BLOG
Vol.4 手仕事から考える森のこと クロストークレポート

ものづくりの「見える化」が

つくり手と使い手をつなぎ直す


■クロストークメンバープロフィール
<講師>
・白水 高広さん
佐賀県出身。大分大学工学部福祉環境工学科建築コース卒。2009年から厚生労働省の雇用創出事業「九州ちくご元気計画」の主任推進員として動く。2012年にアンテナショップ「うなぎの寝床」を福岡県八女市に立ち上げ、現在まで地域文化商社として活動を続ける。地域文脈のリサーチから商品開発、問屋業・小売業を横断して連動させながら、地域の人がやれないような領域を事業化。2019年に株式会社UNAラボラトリーズを設立し、出版・ツーリズム・宿などの事業を展開。株式会社うなぎの寝床 代表取締役。

 ・清水 篤さん
大学卒業後、大手フレグランスメーカーに就職し最終的に営業部長へ、2008年にキャライノベイトを設立。文化・伝統を尊重し、全国各地の素材や伝統手工を織り交ぜ、香りを通じて日本の魅力を後世に残す取り組みを行う。代表ブランドは『WANOWA』『アロマレコルト』。調香師としての顔も持つ。香りの枠を超え地域資源にかかわる「作り手」や「繋ぎ手」が協業することにより、今までの流通にとらわれず「作り手」が創出した価値に応えた対価をもたらすことのできる新しいサプライチェーンを確立するための活動も行う。株式会社キャライノベイト代表取締役。一般社団法人地域資源サプライチェーンイノベーション研究機構 代表理事。

・奥田 悠史さん
三重県出身。信州大学農学部森林科学科卒。大学を休学しバックパッカーで世界一周旅行へ。帰国後、編集者・ライターを経て、2015年にデザイン事務所を立ち上げる。2016年「森をつくる暮らしをつくる」をミッションに掲げる株式会社やまとわを立ち上げ、現取締役/森林ディレクター。伊那谷フォレストカレッジを企画・運営。
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「つくり手」と「使い手」を

つなぎ直すために

今回登壇した白水さんと清水さんは、それぞれ福岡と東京を拠点に「知られていない地域文化や地域資源の魅力を伝えたい」と商品の開発や販売、さらに実際に地域を体験するツーリズム事業などを行っています。白水さんは自分たちの役割を「地域文化を使い手とつなぐ“地域文化商社”」と説明しますが、その役割は清水さん、奥田さんにも共通するところ。具体的な取り組みについて聞きました。

奥田:事業の話を聞いて、おふたりのように「地域資源をどう商品に変えていくか」を考える人が各地域にいればいいなと思いました。

 白水:理想は各県に1人いることでしょうね。ただ外から来た人だけでやっても外の目線でしかないから、地域の人とノウハウを共有しながら一緒にやるのが一番いいと思っています。事業をつくるプロセスもポイントで、そこを一緒にしっかり踏まないと地域の人にとっておそらく「自分ごと」にならないんですよね。

そして同じ商品を売るにしても、お店のあり方は地域と都市とで全然違う。地域のお店が「外から来てくれた人にどう見てもらうか」が軸にあるのに対して、都市のお店は生活者にどんな需要があるかを知り、生産を回していくためにものづくりをどうアップデートできるか考える役割があります。「うなぎの寝床」には今までそうした店がなかったのですが、春から福岡市内に新店舗をつくることになったので実践してみようと思っています。

<地域文化の風景をつなぐため、ものを介した文化の共有を行うshop
うなぎの寝床 旧寺崎邸(うなぎの寝床webより引用)>

奥田:つくり手の顔が昔より見えなくなって、つくり手とユーザーのつながりがどんどんなくなっています。生産者はつくるだけが仕事になってモチベーションが保てず、離脱してしまうこともある。つくり手とユーザーをつなぎ直すことが大事だと思います。

 白水:つくり手がユーザーから遠くなったのは、時代とともに大手メーカーが出てきて仕事がどんどん分業化されて、つくり手が一部を担うだけになってしまった経緯があるからだと思う。一方で今はSNSで簡単に発信できるからつくり手自身が生活者とつながれるようになったし、僕らのような間にいる人間からも伝えやすくなりました。

奥田:清水さんが企画する商品の産地を訪ねるツアーは、つくり手とユーザーをつなぎ直す思いが強いのですか?

清水:石川県能美市の特産の「国造ゆず」の香り成分を活かしたハンドクリームやフェイスパックをつくっているのですが、産地ツアーでは収穫を体験してお昼はゆずを使った料理をいただき、精油の蒸留工程の見学や収穫したてのゆずを使ったルームスプレーづくりのワークショップも行いました。準備はめちゃくちゃ大変でしたが、五感で感じてもらえることをやってみたくて。「どう伝えるか」は、やっぱり大事だと思います。

キャライノベイトが展開する香りブランド
「WANOWA」webサイト

奥田:結局、伝えることはすごく手間がかかりますよね。そこから市場にどれだけ受け入れてもらえるのかをお聞きしたいのですが、白水さんは福岡でお店を始めて8年間、何か変化を感じますか?

白水:やっぱり店舗というリアルな場所の強みは感じています。店舗があるから自分の知り合いが来てくれて、そのまた知り合いが来てくれて、そこから先はもうたどれないのですが、その人たちがきちんと商品を理解して「久留米絣のもんぺってこういうものだよ」とまわりの人に伝えてくれる。そうした連鎖はあります。だから僕らが言葉でどう伝えるか、データベースとしてどういう機能を持たせておくかは大事だと思っています。

清水:キャライノベイトは自分のお店を持たず小売店への卸が中心なので、コロナ禍で小売店が全部アウトになってしまったことで自分たちで売り方を模索することができず、発信できる場が必要だと感じました。ファンをつくっていく意味でも、リアルで伝えられる場はつくらなければと思っています。

使う人もものづくりのメンバー

「自分ごと」に感じてほしい

 つくり手と使い手をつなぐためには、「リアルな場」とSNSの両輪が重要であることが伝わってきました。さらにカギになるのがつくる側、使う側の「自分ごと化」。それぞれの意識が変わるためのきっかけづくりが大切です。

 白水:

地域のつくり手は、自分たちがつくったものにつける値段が安すぎると思うんです。価値をきちんと計り直すことが大事だと思う。一度うちの店にアメリカのお客さんが来られたんですが、「どうしてここまでしか入っちゃいけないの?」と聞かれたんです。お金を払ってでも奥へ入ってみたいのに、と。考えてみたら、200年続く工房を無料で公開してしまったら「ここには0円の価値しかありません」とこちらから言っているようなものなんですよね。そこで「入場料1万円です」と言えば相手は1万円の価値があるものとして見始めるし、僕らも工房の見せ方を考え始めます。ツーリズムは単なる旅行業ではなく、「自分たちの価値をどのように見積もるか」を考えることに意味があると思います。

清水:次のツアーでは、地域でゆずの加工の仕事をしている人もひっくるめて企画したいんです。彼らが加わることで、国造ゆずのブランドの価値をもっと大きな形で底上げしていきたい。

<昨年、キャライノベイトの企画・運営によって開催されたオンラインイベント“五感で堪能 ゆずいろのくにツアー”。>

白水:地域の人たちが「自分ごと化」して伝えていけるようになるのが、一番いいですよね。

奥田:おふたりは冒頭の事業のプレゼンテーションで意図的に「つくり手」「使い手」という表現をされていましたね。使う側も「消費者」じゃなく、「使い手」「暮らし手」といったものづくりの共同パートナーに変える。そこをいかに変えていくのかが、今回の「森と手仕事」の大事なテーマだと思います。どうすれば実現できるでしょう?

白水:森に関わりたいと考える人がフォレストカレッジに参加するように、「どうやって自分ごと化してもらうか」だと思います。多くの人が、ものづくりは自分と関係ないものだと思っている。伝統工芸なんかまさにそうですよね。でも実際に行ってつくり手と話したりすると、急に自分ごとになるんですよ。正直、僕も最初はものづくりに全然興味がなかったんです。でも妻の母の実家が織元(織物の製造元)だったので行ってみたら、思った以上におもしろい生地があったりおもしろい技術を使っていたりして、「これが知られてないなんてもったいない!」と感じたことで自分ごとになって、結果的に仕事にしてしまいました。ネットで見るだけでは、自分ごとにならないんですよね。店に来ておもしろいと思ったとか職人さんと話してめちゃくちゃおもしろかったとか、そうしたきっかけをより多く、色んな形でつくることが重要だと思います。自分たちだけが頑張っても仕方ないですから、いかに多くの人に自分ごととして感じてもらえるかがカギだと思う。

マジョリティに向けるのではなく

ちょっと「ずらす」

使い手を巻き込むにはきっかけづくりが必要ですが、長い目で見ると「支え手」が増えることは大きな意味を持ちます。一方で、登壇した2人が目指すものづくりは、「たくさん売れればいい」というスタンスとは異なるもの。市場の立ち位置の見定め方についても話しました。

奥田:地域のものづくりの視点から見た時、日本中の人に商品に興味を持ってもらう必要はなくて、きっと数万人に支えられているような状態を目指せばいいのかなと思っています。

清水:そうだと思います。僕らがどうして香りにまつわる商品を扱っているかというと、ゆるやかなリピート購入がある商品だから。大量リピートがないから、大手が参入しづらいんです。2万人か3万人、多くても10万人ぐらいのターゲットに買ってもらえればいい。

奥田:ゆるやかなリピートで市場が大規模化しない、先鋭化しすぎないポイントを探っていくことが必要という話を昨日清水さんとして、すごくおもしろかったんですよ。例えば伊那の資源を使った商品を開発しようと考えた時、目指すものはマス(大衆)に訴えるものではないし、かといって一部の、本当にほしい人が数十万円出して買うようなものでもない。微妙な狙いどころはどこにあるんだろうと目を凝らして一生懸命探す、という話がおもしろくて。

白水:今日、伊那の盛木材さんで広葉樹のカッティングボードを買ったんですが、それがまさにこの話だと思います。カッティングボードをきれいにつくったらマス向けだけど、「広葉樹でつくる」というフィルターをかけることで特徴が生まれて、マスから少し外れる。そういう「ずらし」が大切なんだと思います。僕らは商品として「もんぺ」を扱っているんですが、パンツというジャンルには大量の商品があるけれど「久留米絣のもんぺ」というフィルターをかけると一気に狭まる。コミュニティとコミュニケーションになっていくんですよね。あるジャンルの中で、自分たちはどういう括りで出していく意思を見せるか。カッティングボードも、見た目が普通の形でも「自分たちで取った広葉樹」という文脈がモノの中に入ることで唯一無二性が出てきて、きっとこれから地域ではそうしたことをやっていかないといけないんだろうなと考えました。

<うなぎの寝床 オンラインショップ

奥田:清水さんの「WANOWA」の商品も、ハンドクリームというカテゴリーは大きな市場ですよね。その中でちょっとずらす、という感覚なんでしょうか?

清水:ハンドクリームの中でも有機栽培やオーガニック商品の分類に含まれるのと、地域に売上の一部を還元していてサーキュラーエコノミーの要素もあるので、市場の大衆向けではないですね。「届けたいところだけでいい」という考え方で、狙った市場にしか投げていないんです。

奥田:市場全体を大きな円だとすると、その中で小さな円をどうつくるか。「広葉樹の性質を活かしたカッティングボード」という文脈になると、大手は広葉樹を集めて量産することは絶対にできないから、そこにある価値を訴えられる。すごく分かりやすいですね。

白水:カッティングボードはある程度の機能を担保すれば誰でも使えるし、家にあれば買った時のことや森へ行ったことを思い出す装置にもなるから。

<伊那谷の木でつくられた、カッティングボード。伊那谷ツアーで訪れた盛木材さんにて>

「間」を取っ払って

顔が見える関係をつなぎ直す

「ターゲットを的確に定める」というマーケティング視点の話は新鮮でした。最後は商品を売ることの先に目指す地点、そして流通構造を変える必要性についても興味深い意見が交わされました。

清水:僕らの商品はあくまでもおまけの存在で、例えば国造ゆずというブランドを知ってもらうことでゆず自体の価格が上がることが、きっと正解なんです。岐阜の加子母(かしも)という地域で、切り落とされるヒノキの枝から香りを抽出して製品化する事業もやっているんですが、商品を通して「加子母では伊勢神宮の式年遷宮で使われるようないい木がとれる」ということを違うジャンルの人に知ってもらうことで、少しでも木材の価格が上がるといい。商品だけで考えると地域にはそこまでプラスにならないのですが、商品があることで他の価値を上げていく。そんなイメージですね。

< 伊勢神宮の御用材をつくっている、岐阜県加子母のひのきを使ったハンドクリーム(WANOWA webより引用)>

奥田:その考え方はすごく大事ですね。木材も、例えば家具をたくさんつくっても地域全体の木に対してそこまで割合は大きくないし、むしろ大きくなりすぎると良くない。「森を豊かにする」という本流と、どうつないでいくかが大事なんだと思います。商品など資源の活用方法をたくさん持っていると、その分ユーザーのアクセスが増えていくイメージです。

白水:生活者とつくり手の間には問屋や店舗など色々な流通の構造がありますが、僕らはそれをどう攻略していくかを色々な分野で考えています。構造を理解したら、僕らみたいな仲介業者はなるべく飛ばした方がいいと思う。中間の流通が全部なくなることはないと思うんですが、どれだけ間を抜いて、きちんと利益を得ながらみんなの生活を成り立たせるか。その地続きに後継者の問題もあるから。僕らは一時的に中間を担ったりはするけれど、その仕組みをつくり手にどんどん渡せたらと思っています。それから、つくり手の人たちもなるべく自分で情報発信するといいのかなと。最近では、農業従事者が自分でポッドキャストで農作物や栽培のことをどんどん発信していたりしますね。

奥田:仕組みを理解しておくことはめちゃくちゃ大事だと思います。間が広がれば広がるほど、成り立たなくなりますよね。

清水:旧来のサプライチェーンの構造がつくり手と使い手の顔をお互いに見えなくしている大きな要因で、白水さんや僕らがやっているのは、それを「見える化」していくことなんだと思います。ブランドで売れる時代から、「誰がつくっているか」が大切な時代になった。そこをどう表現できるかをみんなで考えることが重要だと思います。

奥田:顔が見えることでお互いのモチベーションが上がって、担い手が増えていく循環もできるでしょうね。卸販売を目指すと、どうしても掛け率によって売りにくい・売りやすいという基準が加わり、掛け率が合うものしかつくれなくなるので、間をうまく飛ばす仕組みをつくって支えられたら。

つくり手とユーザーが直接つながることは大切だと思いますが、みんなとつながる必要はないと思う。数千人、数万人の支えてくれるユーザーとつながる方法を考えていくと、糸口が見えそうですね。「100万人とつながろう!」と思うと何をしたらいいか分からないですが、千人だったら「フェイスブックの友達がそのぐらいいるな」と現実的に考えられると思うから、そこから探っていきたいと思います。

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