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Vol.1 住まいから考える森のこと クロストークレポート

2022.02.03 BLOG
Vol.1 住まいから考える森のこと クロストークレポート

トレーサビリティを付加価値に。
地域材サプライチェーンの可能性


クロストークメンバー プロフィール
<講師>
・古川 泰司さん
新潟県出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。筑波大学院芸術学系デザイン専攻建築コース修了。1998 年アトリエフルカワ一級建築事務所設立。共著「木の家に住もう。」 「世界で一番くわしい木材(共著)」。受賞歴「わらしべの里共同保育所」で第20回木材活用コンクールで優秀賞、および木の建築フォーラム「木の建築賞」。

・澤 秀俊さん
岐阜県出身。名古屋工業大学、ミュンヘン工科大学、ベルリンでの設計事務所勤務を経て、東京工業大学大学院修了。東京・パリでの設計事務所勤務の後、ベトナムで緑化・竹建築の設計に携わる。2018年飛騨高山にて澤秀俊設計環境/SAWADEE設立。NPO法人活エネルギーアカデミーの事務局も務め、自伐間伐材の流通システムと、地域通貨Enepoを運用中。第22回JIA環境建築賞、JIA東海住宅建築賞2021、グッドデザイン賞2021受賞など

 <地域プレイヤー>
・有賀 真人さん
三重県生まれ伊那谷育ち。株式会社有賀製材所代表取締役。祖父・父と代を引継ぎ3代目。30年程前より、当時は建築材としては見向きもされなかったカラマツ材を積極的に住宅に使い始め、地域材100%での家作りを手掛ける。現在は自社のみならず、県内外の大工、工務店、設計事務所からの注文に応じ、伊那産の丸太を製材し製品の販売も行う。

 <ファシリテーター>
・奥田 悠史さん
三重県出身。信州大学農学部森林科学科卒。大学を休学しバックパッカーで世界一周旅行へ。帰国後、編集者・ライターを経て、2015年にデザイン事務所を立ち上げる。2016年「森をつくる暮らしをつくる」をミッションに掲げる株式会社やまとわの立ち上げ、現取締役/森林ディレクター。伊那谷フォレストカレッジを企画・運営。

日本人が家づくりで地域材を使っていない現状

家づくりは、木製品の中で最も木を使うといっていいほどですが、地域材が使われていない現状があります。さらには、それを疑問に感じる人も少ないのかもしれません。私たちは、里山で暮らし、自分の山の木で家を建てていた時代もあるのに、なぜなのでしょうか?

奥田:地域の木を地域で使えない現状が日本全国で広がっています。それはなぜか、そしてどうしたら解決できると思いますか?

古川:いくつかありますが、圧倒的に日本における木造建築のプレカット率が約97%ということでしょうか。昔は大工さんが手刻みでやっていたことを、今は工場で加工しています。プレカットは、地域材がのりにくい仕組みで、社会のひとつのインフラとしてできあがっています。一度に100軒単位で木材を動かす商売のスタイルなんですね。最近では地域材を扱ってくれるプレカット工場がでてきましたが、今まではなかったんです。

有賀:プレカットに地域材がのらない理由として、ひとつは、乾燥がすごく大きなネックです。プレカット工場で主流となっている外材は、海外の大規模工場で製材し乾燥させて輸入しています。大量にストックしているので、電話一本で3日もあれば、家一軒建てられるくらいの構造材を仕入れることができます。仕組みができあがっているので、そのルートに地域材をのせるのが難しいということですね。

古川:どちらが良い悪いという話ではなく、大きいビジネスと小さいビジネスがある。地域を活かしていくためには、どうするべきかを考えていく時なのかもしれません。年間数百棟を手がける大手工務店では無理でも、数棟を手がける地域の小さな工務店にとっては、地域材を使うことが大手に勝つチャンスになる。

有賀:長いこと外材に頼ってきたので、地元の製材所がなくなってきてしまった。本当は今必要とされているんですよね。本来は、うちのような小さな製材所が、地元の材をコンスタントに製材できたら良いのですが、なかなかその体制が整っていないです。

古川:地域の木を使おうとすると1本1本を丁寧に製材することになる。大量に安く、という時代から変わろうとしているのに、丁寧な製材ができる製材所が減ってきてしまっています。

澤:僕らが普段お願いしている製材所の方は昔は5〜6人でやっていたけど今は1人でやっていると言ってました。技術を絶やすことなく、地場の林産業を盛り上げるために、大手ではなく、意識的に近くて小さな規模の製材所に少量ずつでも頼むことで、常に流れができることが重要なのかなと思っています。

山側の都合に設計側が合わせる

そのために必要なデザインの力

ここ数十年で、地域材を使わない大きなサプライチェーンが出来上がってしまった日本。要である製材所がどんどんなくなっていく中で、地域の木を地域で循環するために必要なことは何なのでしょうか。

奥田:僕らのやまとわという会社も、地域材でものづくりをさせてもらっていますが、有賀さんはじめ地域の製材所がなければ適わなかったことです。

古川:有賀さんは丁寧に製材することで、歩留まりを上げている(無駄を少なくしている)。木は丸いので、板に挽けば広い幅と狭い幅の板ができるのは当たり前ですが、商品となると、幅を揃えなければならない固定概念が入ってきてしまう。すると、無駄になる部分がたくさん出てしまう。午前中に訪れたみんなの丘でも、フローリングの栗や外壁の唐松の幅がまちまちでした。設計者である暮らしと建築社さんは、上手にコーディネートして使っていた。それが、幅を全部揃えなければならないとした途端にその可能性がなくなり、木のポテンシャルと価値が上がらなくなってしまう。

奥田:すごくわかります。木が工業製品化していってしまうことがネックなのでしょうね。画一的な規格のものがたくさんいるという考え方が、地域の木を使うことを難しくする。

有賀:木は1本1本、それが同じ樹種だとしても違うんです。節が多い木もあれば少ない木もある。それを常に同じ品質で出そうとすると難しい。本来、ありのままでいいはずで。

奥田:澤さんは、設計側から山側に入っていったと思いますが、どう考えておられますか?

澤:山側の都合を大切にして、出た木をどう使えるかを考えています。工業製品としては、幅は一緒でないとだめだけど、デザインされたものとして面白いと思わせられたら、それはデザインの力です。僕らはそれを信じてやっています。

奥田:ユーザー側は提案されたら、「それもいいですね」って言ってくれるんだけど、設計側とか工務店側で、「揃ってないとだめですよね」と。

有賀:長いこと工業規格の材を使っているとそれしかないと思ってしまうのかもしれない。

無垢の木を使うことはリスクもあるけれど、それを上回る良い価値がある。それをどう伝えるかは、設計側の大きな責任なのかもしれないですね。

プレカットと木の文化

両極の中で見出す地域材の価値

川上にいる山側と川下にいる設計側。両者の歩み寄りと固定概念にとらわれないアプローチが、地域材利用の可能性を高めるという議論がされました。では次に、材を組み立てる立場の大工さんはどうなのかと話が展開していきます。

奥田:暮らしと建築社さんは、地域材利用について、「大工さんも最初は自分達の提案に難色を示していたけれど、回を重ねるごとに受けいれてくれるようになった」と言っておられました。それって大切なことだと思う。何でも提案をしないと楽な方に流れていってしまうかもしれない。

古川:木には1本1本癖があって、それをいかに読み解くかが、日本が今まで培ってきた木の文化、木造建築の文化と知恵。それを今、日本は捨てようとしているんだよね。

澤:それは多分、戦後からの時代的背景が関連しているのかと思います。時代的に、戦後の焼け野原から復興するためには、太い産業を作らなければならず、規格化された工業製品が万人に必要だった時代が続いてきました。それが一通り飽和して、空き家だらけで、ストックの時代だと言われているからこそ、もう一回初心にかえるというか。

古川:澤さんが手掛けられていた築150年の土蔵の増築。手直しに手間がかかると言っていたが、あれができる大工さんって重要。そういったすごい経験があり、木の知識、扱う知恵を持っている人を育てないと、木の文化がなくなってしまう。

澤:あの方は、70歳くらいの宮大工の棟梁ですね。

奥田:悪循環といいますか、プレカットで簡単になって、大工さんの技術が落ちてしまって、できることが限られる。そしてまたプレカットに戻っていくサイクルに入ってしまっていますね。

有賀:ただ現実、97%の割合を占めるプレカットを否定できない。そういう状況のなかで、どうやって積極的に地域材を使っていくか考えていく時ですね。

地域材利用が地域循環を生む

飛騨高山の地域通貨“Enepo”

地元飛騨高山で、設計・デザインを主軸としながら、山の保全・間伐活動から地域通貨の運用・自伐材による建材づくりとサプライチェーンの構築に挑戦している澤さん。集材トラックが週一で市内各所を巡行し、地域の方が伐り出した木を集材、それらを木工業者へ届け、その売り上げを地域通貨Enepoとして参加者へ還元、現在75店舗ある協賛店で利用するといった、地域循環型経済システムです。

奥田:Enepoの活動は、どのような方が関わっているのですか?

澤:シニア層が中心です。リタイアされているので若い世代と比べ時間の余裕もあるし、関わることで健康になったという方ばかりです。少子高齢化を憂うのではなく、元気な大人達が輝く場所となってます。

奥田:地域の巻き込み方ってどうされたのですか?最初からその熱量があったのですか?

澤:やっぱり徐々にですし、わかってもらうためには、地道に地道に積み重ねてきました。今ようやく8年目に入って、賞をいただいたりとか(グッドデザイン賞2021等)、メディアに取り上げて頂いたりして、色々な人が興味を持ってくれるようになり、若い人も来てくれるようになりました。伐るだけでなく、枝を集める軽作業もあるので、大学生の女性も来てくれたりして。そういう風に、どんどん市民に開けた場所になりつつあります。

活エネルギーアカデミーEnepo facebookより引用

奥田:もともとは、エネルギーとして使おうという「木の駅プロジェクト」があり、発展した形だと思うのですが、澤さんが事務局をやることで、建築に使うところまでやろうとなったんですよね。

古川:(木の駅プロジェクトの)バイオマスの流れから、建築で使えるものがあるという発見があったということですよね。

澤:山で木を伐り倒して、捨てていたら0円だけど、それを引っ張り出してきて、根元から枝葉まで余すところなく活用できないかなと考えることで、価値がどんどん増えていきます。

活エネルギーアカデミEnepo facebookより引用

地域材での家づくりは

森とユーザーをつなげる

意義あるリレーション

木こり、製材所、大工、工務店、設計士。地域材での家づくりを考えるとそれぞれの持ち場に難しさがあるようです。連携することで、地域材のサプライチェーンを作っていくことはできるのか、さらにはユーザーと森をつなげていけるのか、今回のテーマである「住まいから考える森のこと」に迫っていきます。

奥田:製材所が中心になって、100軒の流通をつくるのは大変だけど、地域の工務店が5軒とか集まって、年間何棟くらいなら建てられそうかと話して、軒数分の地域材を賄うことはできないのでしょうか?

古川:ネックなのは、林業の方かもしれない。林業は、年間の間伐の量の計画書を出し、その範囲で、補助金をもらってやる。川下側の需要を考えたらもっと伐ってもいいはず。もっと欲しいと、ちゃんと言えば伐ってくれるのかもしれない。その仕組みを作らないとだめですね。

奥田:それだと思っています。例えば、年間地域で20軒の家を作るからだいたい何立米くらい木を出して欲しいということを、木こりと製材所に伝えたら、割とスムーズにいくのではないかと考えたことがあります。

古川:それは現実的アプローチですね。使う人のことを考えて、森とつながっていかないと地域の木材は活きてこないと思う。

奥田:この木がどこにいくかが分かれば、木こりも楽しいし、製材所も製材しやすい、住宅の人もトレーサビリティが見えてくる。それが付加価値づけになるような地域設計ができないかなと思っています。

澤:一つ付け加えるのであれば、建材だけを狙うなどいいとこ取りでいくと森林保全の本流からはちょっと外れてしまう。僕らが大事にしているのは、あくまで森林保全だから、ちゃんと森の更新のことを考えて、良さそうな木でも森の診断をしてちゃんと残すべき木は残す。細い木は建材には使えないけれど、焚き物にはなる。化石燃料に置き換わることは、地球のことを考えるとものすごい価値なので。

地域のモノ・コトを活かし

環境をデザインしていく

前半は、なぜ地域材を使った家づくりが難しいのかという話をしてきました。後半では、地域の木を地域で使って家をつくるヒントがいくつか醸成されました。山から出た木をどう使うかという視点、設計・工務店がそれを提案する力、ユーザーから求める声。

奥田:澤さんは、ヨーロッパ、ベトナムに行かれ日本に帰ってきて、色々な地域で建築・設計をされていると思うのですが、日本に帰ってきて、木を使った建築を中心にしていこうと思ったきっかけはありますか?

澤:その場所にあるものを使って、建築って建てられてきたんですよね。ヨーロッパは石の建築、ベトナムは熱帯雨林ですが、伐採が進んで全然残っていないので木が希少になって、竹で建築を作っていたりする。で、日本が誇る資源といったら森林資源じゃないですか。昔から日本人は、里山の恵みで生きていた。戦後白紙になったところで、石油産業の恩恵で我々は発展してきた。今、石油構造に学んでそれを森林に置き換えていく。車がバイオマスで走る時代も夢じゃないんではないかと思っています。

古川:国際的には、炭素資源は化石資源からバイオマス資源に大転換しようとしている。日本は乗り遅れている気がする。澤さんの活動は先進的ですよね。

澤:Enepoの活動は、物流システムを行政と協力、採れた木を活用する木産業があって、地域通貨を担保してくれる銀行とその価値をわかってくれる協賛店。この3点セットがあればどの地域でもできるんですよ。それを日本全国色々なところでやってもらえると、山が綺麗になる。汎用性があると思っています。

奥田:澤さんへの質問がきています。「設計士が活エネルギーの事務局を担う意義として感じることはあるでしょうか?」

澤:建築の設計は、デザインだけじゃなくて、調整もしなきゃいけなくて、「コミュニケーション能力が高くないと建築家ってできないな」っていつも思うんですよ。NPO活動や資源活用のことになれば、色々な人と関わりやりとりをして、それを束ねていかなければいけない。設計の仕事も色々な要素を整理して統合して束ねていく仕事だと思う。だからこそ、建築家じゃなくてもいいんですが、状況を判断して整理整頓して、コミュニケーション能力がある人が向いていると思っています。そういう意味でデザインや設計をする建築家は、親和性が高いと思っています。普段の業務に近いところがあるというか。

古川:僕も建築家なんですが、場を作るのも僕らの仕事。モノを作るだけじゃなくて、そこに人がいてどうやったら楽しくなってくれるかとか、どうやったらコミュニケーションが生まれるかとか、そこまで含めて僕らの仕事だと思っています。モノのデザインとコトのデザインをしている。午前中に見たみんなの丘でもそうですが、隣同士つながり、次は地域へとつながる。地域づくりも建築のデザインといえる。

澤:広義な意味での環境デザインですよね。地域通貨もそうだと思っています。

活エネルギーアカデミーEnepoより引用

地域材の地域循環は

グランドデザインで描く

最後のパートでは、受講生からの質問に答える形で議論は進行。建築設計の古川さんと澤さん、製材所と工務店の2つの顔を持つ有賀さんが、山側の川上から、設計側の川下までトータルで考えて地域材の利用を考えていく必要があるという議論を展開していきました。

奥田:もう一つ質問です。木こりの方からですが、「小さな製材所がなくなってきた歴史のなかで、外材を扱うのと同じくらい効率的な大きい製材所が各地にあったら嬉しいのですが、なぜできないのでしょうか?」

有賀:県内にもあることはある。地域材を扱うことと大量生産をすることは相反する部分がある。なぜかと言えば、地元の木は、外材みたいに太くなくて小径木が多い。そうすると、木の癖を一本一本見ながら製材することになり、製材する量はすごく限られてしまう。片や大きな製材所は、木の癖は関係なく、スピード・効率重視で製材していく。乾燥がネックですが、すぐに人工乾燥にいれて狂わないようにして流通にのせていきます。

古川:乾燥でいうと、地域材がプレカットにのらなかったのがのるようになったのは、 ドライングセットという高温処理の技術が確立されたんです。木は、樹脂部と繊維部があるのですが、樹脂部を高い温度でさらすと溶けて癖がなおる。高温処理すると樹脂部が炭化するんですが、それが木にとっていいのかがわからない。木が脆くなったという大工さんもいる。大きな製材所で地域材が製材できるようになったのだけど、本当にいいかどうかは、まだ大きな疑問符が投げかけられています。

有賀:僕らのやっている仕事って、どうしても時間と手間がかかるんですね。

古川:丸太を製材して角にする時に、4回ノコギリを入れたらいいわけではない。修正挽きといって、1本引くごとに木の癖がでる。それを直すために、薄く何度も何度もノコを入れていくのが本当の製材なんです。丁寧にやらならないと、本当は木の良さ、ポテンシャルを引き出せない。

澤:今の話は、川の太さに例えられると思うんですよ。いきなり地域材でばーっと挽いたところで、出口がなければそこでスタックしてしまう。やはり、森の上流から出口のまちの暮らしまでがつながっていくことが大事だと思います。最初は細いところから、僕らの活動なんて今はまだめちゃくちゃ細いと思うのですが、だんだん仲間が増えて太くなるみたいに、最後には大河になってものすごい流れができてくる。いきなり部分的に広げてもだめで、製材所だけ、木こりだけが頑張ればいいのではなくて、全体をしっかりとグランドデザインとして描くことが需要だと思う。

奥田:どこか1点で解決することはほとんどなくて、木こりも製材所も増える、工務店も小さな提案ができるところが多くなることで、森が豊かになっていく。

澤:そして、みんながそれを応援するために選ぶ。

奥田:フォレストカレッジでは、そういうところを一緒にやるアイデアを考えられたら面白いなと思っています。

古川:絶対できると思います。ひとつは、工務店なり設計事務所がチームを組み、必要なものを情報整理して、製材所と山側にどう言えるかにかかっているのかなと。

澤:共有するプラットフォームができることが重要ですね。

奥田:時間が足りないですね。「森と住まい」でお伝えしたい内容がもっとありましたが、今回、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。

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