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キャリアデザインに森を生かすには|前編

2021.02.12 BLOG
キャリアデザインに森を生かすには|前編

信州伊那谷で、2020年11月に開講したINA VALLEY FOREST COLLEGE(https://forestcollege.net)。
2020年度の授業は、オンライン開催で、全6回を予定しています。

2020年12月12日、第2回目の講座「森と教育」が行われました。

講師は、ネイチャーガイドで南信州キャンプセッションの久保田雄大さん、日本で唯一の私立の農業高校で有機農業を教えている愛農高校の近藤百先生。地域プレイヤーは、上伊那でキャリアコンサルタントとして活動している富岡順子さん。

今回は前編です。ゲストの2人が、伊那谷の森と教育をインプットする時間としてめぐった「伊那谷ツアー」では、学校林で森の授業を行う伊那西小学校と、2018年に「グローカル(グローバル+ローカルの略)コース」をスタートさせた上伊那農業高校でお話を伺いました。

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森の多様性が導く、教育の多様性

今回のテーマは、「森と教育」。キャリア教育・キャリアデザイン、子どもの学び、組織での学び、森をフィールドにした教育にはどんな方法があるのか。森と教育の可能性は、森の多様性から導かれるのかもしれない

「地域と共に守る学校林で森の授業を行う」
伊那西小学校

1.4haの学校林を生かした学び

伊那市の西山、中央アルプスの裾野にある小高い丘に立つ伊那西小学校(以下、西小)(http://www.ina-ngn.ed.jp/~inanishi/

児童減少を受け、2018年4月から伊那市内2校目の「小規模特認校」に認定されました。現在、全校生徒は51名です(2020年12月現在)。

伊那市では、小規模特認校制度を下記のように定義しています。
「小規模ならではの特色のある教育を行う小学校や中学校を市教育委員会が指定し、通学区域の規定に関わらず、保護者の申し出により通学区域外から通学ができるよう弾力的な運用を行う制度です(引用元:伊那市ホームページ)(https://www.inacity.jp/kosodate_kyoiku/gakkokyoiku/syokibo_torikumi.html)。

西小の特徴は、校舎を抱くようにこんもりと茂る学校林。1950年に開校した際は草原だった場所に、1952年にPTAの手によってカラマツ500本が植樹されました。その後、アカマツ、桜、紅葉が自生するなどし、今では1.4haの広大な森のなかに、42種類600本以上の樹木が生息しています。

教科性と森での教育を両立していく

そんな環境を生かそうと、西小では「森がぼくらの教室だ」を基本方針に掲げ、学校林を中心に自然環境を活用した学びを追求しています。

主体性・おもいやり・自己表現・五感を使って・探究心・地域とのつながりの6つをキーワードに、特色のある学びが繰り広げられています。

担当教諭の千賀先生は、「学校は、先生や生徒や保護者、いわゆる人が変われば変わってしまうので、西小教育の取り組みをみんなで作り上げ、土台を作っていきたいと思っています」と話します。

「森での教育」について、「森に行って遊ぶのは大事な活動だけれど、学校教育である以上、教科性をいかに森から学ぶのかが大事です。国語で見る森、算数で見る森、図工で見る森。森はさまざまな姿があるがゆえに、教科の視点も持っていないと、活動が散漫な目になってしまう」と千賀先生。

森のでの読み聞かせ体験、自然観察、基地や家づくり、リタートラップを使った研究、森の変化や樹高の観察。他にも木の枝が作り出す角度を観察し算数で習った角度を体感したり、観察した蝶を絵にしたりと、教科と連携した取り組みを試行錯誤しているそうです。

(伊那西小学校webより引用/http://www.ina-ngn.ed.jp/~inanishi/

子どもたちの自己肯定感を高めてくれる学びへ

「子どもたちが、見えているものから見えないものに気づいていく。概念を知り、その概念を体験に結び付けてくれる学びの場」、千賀先生が話してくれたように、西小にとって森はそんな場所になっています。

一方、子どもだけでは限界があるので、地域の方をはじめ東京大学の先生といった、森や生物の専門家の方にサポートしてもらっているといいます。「地域の熱意のおかげと特認校だからこそ叶えられる体制」と千賀先生。

「苔の音が聞こえる」、「森を歩くことが夢だった」、「今日森で宝物を発見したよ」

森の学びを通して聞こえてくる子どもたちの声。学校に森がある環境だからこそ、広がる学び。

森を通した、気づき、意欲、創造、つながり、探究、追求、表現が、どもたちの自己肯定感につながっていく

「腐葉土作りを始めて変わった子がいた。子どもたちは、だんだんと森に出るようになった。休み時間にもやっている子がいる。学校に行くことが楽しいと思ってくれたらいい」千賀先生は、そう結んでくれました。

(伊那西小学校webより引用/http://www.ina-ngn.ed.jp/~inanishi/

「森の香りのルームスプレーを商品に」上伊那農業高校

自然や地域を通じた学びが特徴の高校

伊那谷の南箕輪村にある上伊那農業高校(以下、上農)(https://jono.ed.jp/は、1895年に設立された歴史ある高校です。長年、地域に根差した農業のスペシャリストを輩出してきました。

そんな中、多様化する生徒の希望を受けて学びの体系を整えるため、2018年に学科改編が行われました。生物生産科・生命探究科・アグリデザイン科・コミュニティデザイン科の4学科を新設。伊那谷エリアの中でも先駆的な取り組みを率先して行い、「主体的・対話的で深い学び」を目指しています。

今回、コミュニティデザイン科グローカル(GL)コース3年生の森林資源活用チームが開発した、森のルームスプレーについてお話を伺うため、上農を訪ねました。

GLコースは、長野県を元気にするビジネスプランを競う信州ベンチャーコンテスト2020の高校生部門で、最高賞のグランプリに輝いた実績を持つ注目のコース。伊那谷をPRする商品の開発やデザイン、マーケティングなどを行うNPO法人「MIRAINAカンパニー」設立するなど、意欲的な取り組みが注目を集めています。

■生徒が主体となり進めた、森の商品開発

2020年11月1日、GLコースの3年生5人が進めてきたルームスプレーが販売されました。生徒たちは、2年次の実習から「香りで伊那谷をデザインする」をテーマに、試行錯誤を重ねてきたそう。

伊那市森林サポートプロジェクト・ミドリナ委員会https://midorina.jp/)の協力を仰ぎながら、マーケティングやデザインについても学び、研究・開発を進めてきました。

商品名は「ジーエル・ティアモ」。最初のジーエルはコースの名前で、ティアモはイタリア語で「愛している」の意味。「どうしてイタリア語かというと、昨年夏にイタリア人留学生が来ていたのですが、新型コロナウイルスの影響で帰国することになってしまいました。その子を想い、また国境を越えて遠い場所でも愛される香りになるようにと願いを込めました」と、担当生徒。

伊那谷に住む上品な主婦層をターゲットとし、パッケージデザインもシンプルに。伊那市内でミツロウキャンドルなどの卸販売を手掛けるワイルドツリー(http://www.wildtree.info/)の平賀裕子さんらに相談しながら、原価を抑える工夫をし、販売価格を150mlで税込2200円と決めました。

ルームスプレーの素材は、校内の森にある約200種の樹木から香りや成分分析をし、レモンのような爽やかな香りがするネズコと、甘い香りのコウヤマキをセレクト。「とても爽やかな香りで森のなかにいるような感じがする」と、生徒たちは話します。

また、抗菌作用を調べるため、ミネラルウォーターとルームスプレーにそれぞれ浮遊菌を移して、経過をみる実験もしました。ルームスプレーをしたところには菌の繁殖が見られず、抗菌作用があることがわかりました。「夜寝る前に部屋や枕元に、お風呂で使えば森林浴気分、下駄箱や玄関での臭い消しに」と生徒たちはPRします。

地元高校生も実感する、森と人の遠い距離

長野県の森林率は約8割。そんな環境にありながらも、地元である上農の高校生たちですら「森と人との関係が希薄になってきている」と訴えます。上農に入らなければ、森に入る機会がなかったのではないかとも、話してくれました。

担当教諭である山下先生は、「商品開発の最大の目的は、生徒も話していたように、森と人との関係が薄くなってしまっていること。森林地域資源の使い方を知り、それには森を育てなきゃいけない手を入れていかなければいけないことに目を向けてもらいたい」と話します。

最後に、森と暮らしについて、生徒の2人が話してくれました。「普通の生活では、森のあるレジャー施設にも行く機会が少なく、森を見るのも車で脇を通った時くらい。私の考える森と近い暮らしは、たまにはみんなで森に行って楽しんだり、休日に少し森に入って遊ぶことかなと思う」。

興味がないと森には立ち入らない。他の方に興味を持ってもらうためにも、香りや他の商品を通して、森にあるもの、森のいいところを伝えていきたい。そうすれば、だんだんと行く機会が増えて、生活の中に森が関わってくると思う」。

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\ 伊那谷ツアーで訪れた場所 /
長野県上伊那農業高等学校 https://jono.ed.jp/
伊那市立伊那西小学校 http://www.ina-ngn.ed.jp/~inanishi/


▼伊那谷ツアーvol.2の様子が映像になりました!

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