11月20日(土)「伊那の森で焚き火会議」に連動して、翌日の11月21日(日)に「長谷ツアー」を企画しました。伊那谷フォレストカレッジ協議会委員である、私田中が4年間続けている「伊那市長谷地域での活動」から派生したものです。
私は、伊那市の地域おこし協力隊として着任した初年度2018年に、長谷地域での活動の機会をいただきました。
南アルプスの登山口として知られる長谷は、登山シーズンこそ賑わいを見せるものの、冬は訪れる人も少なくなるので、何か冬を楽しめる取り組みを考えようということで、「HASE Xmas」を企画しました。
この企画をするにあたり、長谷の現状を知る機会をいただきました。課題として浮かび上がってきたのは、「元林業の村だったけれど、現在林業は衰退して、村の人口も年々減っている。いわゆる限界集落になり、付随して耕作放棄地や鳥獣被害、高齢化などの課題がでてきていること」でした。
こういった課題を伊那谷フォレストカレッジの課外授業として取り上げていただいたことで、受講生の古田裕さんから「長谷地域をテーマとしたツアーを開催してみませんか?」というお声かけをいただくことができました。
古田さんは、株式会社YOLOT(https://yolot.jp)を創業し、旅行会社を経営されています。なかでも、本物の体験を通して、社会と人とのつながりを深める旅行サービス「シントラベル(https://shin-travel.jp)」を展開されていて、そのコンセプトに通ずるところがあるのではないかと、長谷ツアーの内容を一緒に考えてくださることになりました。そして、一緒にサポートしてくれたのは、事務局の榎本 浩実さんです。
2021年も12月に「HASE Xmas」を企画していました。地域おこし協力隊を卒業した今年度は、一個人として企画・運営をすることにしました。少しずつ地域に根付いてきたツリーの灯りを絶やしてしまう寂しさや責任を感じていたからです。4年目も、そしてこれからも長谷に灯りをともすためにできることは何だろうか?
ひとつ、続けていく意義や可能性にならないかと考えていたのが、例年の長雨や台風で、長谷の美和ダムで問題になっている流木でした。莫大な予算をかけて廃棄している流木を再利用して、HASE Xmasの資金や長谷の小さな仕事を作れたらという思いがありました。ただ、アイデアやノウハウ、行動力も足りずに困っていました。そんな投げかけに賛同くださった受講生のみなさんが、ツアーに参加してくださることになりました。
流木を拾ったあとは、地域の公民館に移動して、溝口未来プロジェクト代表の中山勝司さん、副代表の中山友悦さんから、地域の現状や取り組みについてお話を聞きました。参加者のみなさんが、真剣に耳を傾けてくださる姿が印象的でした。
未来プロジェクトさんからの紹介で、1987年から伊那市で木工学校に通い、長谷に移住して木工房を構えた植野忠司さんのところにも伺いました。
次に、築約130年の蔵を利用した民泊宿「みらい塾」へ。1997年に開業したこちらの宿は、名物女将の幸子さんを目当てに、国内外から宿泊客が絶えない宿です。コロナ禍に入ってからは、宿の受け入れは中止されていて、今回の視察も久しぶりということでした。
長谷での暮らしについて、ご自身の人生について、熱く楽しくお話くださりました。いつもそうですが、女将さんの話は人を惹き込む力があり、いつのまにか、ものすごいパワーをいただきます。
帰りのバスのなかでは、ひとりずつ今ツアーの感想をいただきました。濃厚な1日。受講生のみなさんの真摯な気持ちが嬉しく、今後の活動に大きなヒントをいただけるような時間でした。
みなさん、本当にありがとうございました!
<参加者の声>
・流木拾いを通じて長谷ツーリズムの可能性を真剣に検討している熱意が感じられた。 みらい塾女将の話を通して、事業の成功は誰にでも見えているところの差別化ではなく、見えていないところの差別化が重要だと感じられた。
・短時間でいくつもコンテンツを組み込んでくださってて、とても充実した時間を過ごさせていただきました。流木を拾ってその場で流木の活用について考えるという空間が良かったですし、溝友館で長谷について伺い質問にも答えていただけたことや、木工房の見学もなんと言うか”リアリティ”があって良かったです。
・「想い」を感じる企画だった。 企画者、協力者の人間性がとても素敵で、自分の利益のためだけではなく、地域を想い前向きに取り組んでいることが強く伝わってきた。自分ができることはなんだろうと真剣に考えるきっかけとなりました。
・良い面、悪い面、どちらもざっくばらんにお話を伺えたので、自分と同じような課題を持っている人にも体験させたいと思いました。
(文:田中聡子)