フォレストカレッジ9月合宿では、初日の夜にオプション講座として「フィンランドの森と教育」を開催。上伊那地域の教育関係者やフォレストカレッジ受講生など、約100名が参加しました。
フィンランドは国土の7割を森林が占めており、日本と同様に森林に恵まれた国です。
世界幸福度ランキングを見てみると、フィンランドは5年連続で第1位。世界幸福度ランキングとは、ひとりあたりの国内総生産、社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由、他者への寛容さ、国への信頼度、汚職のなさなどを総合的に評価したもので、2022年 日本は第54位でした。
講演の冒頭で「他者への寛容さや国民それぞれが抱く幸福度というのが非常に大事ではないか」ということに加え、「フィンランドの森を活用した教育に詳しいカトゥヤさんのお話をお聞きして、今後の社会づくりに対するヒントを学べたら」という話がありました。
講師としてフィンランドからお越しくださったのは、Ms. Katja Väyrynenカトゥヤ・ヴァウリュネン(北カレリア教育研修コンソーシアム・リベリア専門学校)さん。
現在、職業専門学校の講師を務めるほか、個人事業主として北カレリアの特産品を海外に販売するという起業家の一面もお持ちです。これまで、小学校、高校の教師そして専門学校の講師をつとめてきました。
フィンランドで行われている教育の大きな特徴としては、幼児教育から大学まで全てにおいて環境に関する教育が行われていること、そして18歳までが義務教育であるといいます。
また、一般的に社会で起きている事象を取り上げながら学んでいく“現象ベース学習”は、7歳から16歳に行われています。どういう形で授業を進めていくのか大枠は決まっているものの、教師の裁量に任されている点が特徴だといいます。
大きな学校では、数人のグループに分かれてテーマを決め、どういった授業内容にするのかを決めます。一方、小さな地方の学校では先生の人数も限られているので少しやり方が異なるそう。
例えば、クラスでエネルギーについて学習するとなったら、エネルギーについて生徒が調べて、先生は答えを見つけずにサイドからサポートするだけ。同じテーマについて、それぞれのグループが調査したり観察したりしたものを持ち寄るので、3つグループがあれば3種類のことを学ぶことができます。さらに、教科書一冊だけではない数学や歴史、理科といった教科を越えた多くの学びを深めることができるのです。
フィンランドの環境教育では“環境について学ぶ”“環境への配慮”“自然環境の中で遊びながら学ぶ”という3つが核となっています。
若者にとって大切なのは、色々な人との協力関係、好奇心旺盛であること。自然を直接体験するということを通して、自分と環境との個人的な関係は何かを考え、環境に配慮した姿勢を高めること、とにかく自然の中に入って動くということを重視しているといいます。
また、教師も生徒も計画段階から一緒に参加して自然の中に入り、五感をつかって喜びを感じるということが大切です。教師に能力や時間があるかどうかではなく、とにかくまずやってみる。大きな予算は必要なく、自然教育をするためにどうやったら良いかや、生徒や保護者に自然教育をすることが安全であるということを伝えることに力を注ぐことが非常に重要であるという話がありました。
講演の後、教育関係者やフォレストカレッジ受講生から積極的に質問が出ました。時間に限りがありましたが、ひとつひとつの質問に対して丁寧に回答をいただくことができました。
フィンランドの教育現場に関わっているカトゥヤさんのお話を直接会場で聞くことができ、教育関係者にとってもフォレストカレッジ受講生にとっても学びの多い時間となりました。